ハイハイ

Oと私が乗る車が前を走るタクシーに追いつき並走する。その後部座席にはある男性とYの姿がある。

隣のタクシーの中から会話が聞こえた。「あのさー、ちゃんと言おうと思ってたんだけど、このままいくと付き合うって思ってるかもしれないけど・・・」という男の声。私たちの車がタクシーを追い抜くその瞬間、涙目のYと目が合った気がした。

私たちは飲み屋に入った。が、間もなくして店の前の砂利道をハイハイしながらYが近づいてくる。明らかに酔っている。実際そんなことできるはずもないが、私は「危ない危ない」と言いながら軽々と彼女を抱き上げた。「あのねー、振られちゃったぁ」と呂律の回らない口調でYは言う。お店の中に連れて入ったけれど、Oに話を聞かれたらまずいと思い、彼女を抱き抱えながらまた外に出る。その間も背中の方で彼女はなにかブツブツと独りごちている。

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