力士のパレード

青山界隈の沿道と墓地を隔てる塀沿いを真っ直ぐ歩く。

沿道沿いにはお祭りの縁日が出ている。しばらく進むと伯母の姿があり、続いて伯母の婚家であるNの家が見える。伯母にお盆だからお参りして行けと言われる。母屋に入ると、大広間の座敷の仏壇に装飾が施されている。昭和初期からの歴史が仏壇奥の2面スクリーンに映し出されている。

あれは昭和天皇ご成婚の時だろうか、沿道のパレードの先頭を、黒塗りの車の列に続き化粧回しをつけた力士たちが2列になり、どっしりと腰を落として両手を広げた姿勢のまま高速で前進している映像があった。そのあまりのスピードに、思わず笑ってしまった。

N家を去り、再び墓地の塀沿いを歩いていると、塀に設置された墓地のドアを開けて中に入ろうとするYを発見する。祭りで賑わう沿道を避けて人の少ないところを歩こうとしているのか。私は彼女に気づかれないように別の入口から入ろうと思う。そして咄嗟に、バッタリ会った時の言い訳を考える。「墓石に刻まれた珍しい文字を探している」と言うことにして、墓の合間を進む。